先日、FOODEXへ行った件は別途こちらでレポートしておりますが、その会場の日本酒造中央会ブースの粕取焼酎を置いたコーナーで「これは正調粕取りですか?」という会話がなされていました。名刺を見るととある酒販店さん。話を受けた方も「ああ、これは正調ですね」という返答。酒販店さんが持たれていたのは「ヤマフル」ですから間違いなく正調粕取でした。「最近正調を梅酒で使いたいというお客さんがいるんですけどうちでは扱ったことがなくて。ほかには正調あるんですかね」とは酒販店さんの弁。受ける側は「吟醸粕は多いですけど正調はなかなか増えてこないですね」との返答。続けざま「でも残してきた蔵はやめる気がないみたいでこれなんかも正調ですよ、ちょっとタイプは違っておとなしめですけどね」と持ち上げたのが山形・樽平酒造さんの「たるへい」でした。
ここまで極めて自然な会話で、会場では聞き流していたのですが、いま改めて思うにこれはすごいことだと身震いがします。
蒸留時に籾殻を使用した粕取焼酎を「正調粕取」と呼ぼうと提案したのは、私の記憶が正しければ九州焼酎探検隊の「KASUTORI NOW!」(2002年08月09日)が最初のはずです。そして定義がしっかり固まったのが「「Dr.けんじの粕取焼酎概論」」となります。この項目が記されたのが2002年08月26日のこと。2002年当時は粕取り焼酎、特に昔ながらの籾殻を蒸留時に使用した粕取り焼酎は絶滅の危機に瀕しており、九州焼酎探検隊の猛牛氏・goida氏・けんじ氏を中心にこれを何とか残していけないか、という動きが始まったところでした。その一環で記されたのが上記の「Dr.けんじの粕取焼酎概論」です。ここで初めて「正調粕取」という言葉が定義化され、この世に誕生したのです。この言葉を使った最初の商品がおそらく2003年に十数年ぶりの蒸留が行われた鳴滝酒造さんのヤマフル無濾過原酒です。
それから4年半の歳月を経て、「正調粕取」という言葉がある程度知った人ならば普通に通じる言葉となり、そして昨今の梅酒を中心とする和リキュールブームから消費者の間でも再び見直されているのだとしたらこれほどすごいことはないと思います。以前も書きましたが、このようなきっかけを作られた関係者の皆様の努力は大変なものであっただろうと思います。正調粕取焼酎が後世に残っていくことを祈念してやみません。
ついに言葉がひとり立ちした「正調粕取焼酎」
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