混和焼酎と本格焼酎

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最近、スーパーなどで「甲乙混和麦焼酎」などといった商品が売られています。このページでは混和焼酎について解説しています。

1.混和焼酎とは

混和焼酎とは、連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎をブレンドしている焼酎を指し、連続式蒸留焼酎が多いか、それとも単式蒸留焼酎が多いかによって名称が変わります。一部の雑誌や書籍などで「混和焼酎の名称基準は酒税法で定められている」と書かれていることがありますが、これは誤りで、日本酒造組合中央会ならびに日本蒸留酒酒造組合の自主基準(「単式蒸留しようちゆうと連続式蒸留しようちゆうを混和した酒類の表示に関する自主基準」)です。この自主基準では、単式蒸留焼酎の比率が5%以上50%未満の場合には「連続式・単式蒸留しようちゆう混和」「連続式・単式蒸留焼酎混和」「しようちゆう甲類乙類混和」「焼酎甲類乙類混和」、単式蒸留焼酎の比率が50%以上95%未満の場合には「単式・連続式蒸留しようちゆう混和」「単式・連続式蒸留焼酎混和」「しようちゆう乙類甲類混和」「焼酎乙類甲類混和」とそれぞれ記載することが定められています。

2.混和焼酎はなぜ生まれたか

それでは混和焼酎はなぜ生まれたのでしょうか。もともとはかつての麦焼酎ブームにまでさかのぼります。日本中をいいちこと二階堂が席巻した麦焼酎ブームは、いかに麦焼酎の香りと風味を残しながらライトな味わいにしていくかという技術開発が生み出したものでした。いいちこや二階堂をはじめとする当時の大分麦焼酎蔵は、本格焼酎の製法で醸した麦焼酎をイオン交換ろ過によって、ライトな味わいへと変えていました。その際、甲類焼酎(現在の連続式蒸留焼酎)のメーカーは、イオン交換ろ過ではなく、既に自分たちが製造していた甲類焼酎と桶買いした本格焼酎を混合することで、イオン交換ろ過に近づける製品開発を行ったのです。当時、イオン交換ろ過という技術は焼酎への応用が確立した直後で、さらに焼酎とウイスキー類の税額格差が、EC諸国(現在のEU)によって貿易障壁としてGATT(現在のWTO)へ提訴されそうな状況であり、その結果によっては税額が大幅に上がって、焼酎は絶滅するという論評がなされていました。こうした情勢もあって、多額の設備等を必要とするイオン交換ろ過ではなく、より安価にライトな麦焼酎を生産できる混和焼酎へと向かったのでした。

3.混和焼酎の復活

こうしてメジャーになった混和焼酎ですが、イオン交換ろ過法の普及と蒸留器内の圧力を下げてライトな味わいを生み出す減圧蒸留の手法が広まったことで、商品点数は減少していました。なぜ混和焼酎と同じような意図で生産されている減圧焼酎やイオン交換ろ過が残ったのに混和焼酎が減少してしたのでしょう。減圧焼酎やイオン交換ろ過焼酎は、常圧焼酎では実現が難しい”香り”というメリットがあったのです。常圧焼酎は香りは控えめで、舌に乗せたときの味わいがメインでした。様々な工夫によってだんだん華やかな香りを持つ常圧焼酎も誕生してきていますが、主流は味わいです。一方、減圧蒸留は素材そのものが持っているフルーティーな果実香を引き出し、イオン交換ろ過は吟醸香に近い香りを附加することの出来る手法です。単純に量を増やして素材を薄くするだけの混和焼酎が廃れていったのは「香り」という点で減圧やイオン交換ろ過に劣っていたためです。

4.混和焼酎の復活

焼酎ブームを経て、本格焼酎が一般的になるとスーパーやチェーン系リカーショップから本格焼酎の陳列訴求が出てきました。スーパーなどのマス流通も従来の価格帯で取り扱ってくれればよいのですが、マス流通の対象となる消費者はどちらかというと味わいよりも価格を重視する層が対象です。販売店側からの価格下落要求に対して、マス流通で様々な酒類を展開している大手メーカーは強く出ることは困難です。しかし、製造に手間も費用も掛かる本格焼酎では価格を安くすることが出来ません。そこで、かつて味わいの面から開発された混和焼酎が、安く生産できる連続式蒸留焼酎を混和させることで価格を下げて増産も可能となるという経済的な側面から再び着目されることになりました。その結果、大手ビール系酒造メーカーの紙パック製品を中心にスーパーのプライベートブランドに至るまで、混和焼酎が市場に多数出回るようになったのです。

5.混和焼酎は混ぜ物焼酎

このようにあくまで経済的な効率のみを重視して生産されている混和焼酎は、日本酒でいうところの三増酒のような存在と考えても良いと思います。本格焼酎そのものがもつ味わいや香りを消し去るだけでなく、消費者を本格焼酎と誤認させるような販売手法は、本格焼酎そのものの伝統を危うくするばかりでなく、三増酒によって「日本酒はまずい」という認識が広まってしまったのと同じ事態を本格焼酎にもたらしかねない危険な存在です。大手ビールメーカーには本格焼酎と間違える「麦焼酎」などとの記載を止めるよう強く求めるとともに我々消費者の側も商品に「焼酎乙類甲類混和」「乙類甲類混和麦焼酎」などと書かれている場合には「これは安いけれど混和焼酎だから安いんだ、混和焼酎は本格焼酎とはまったく違う混ぜ物焼酎だから味には絶対に期待してはいけないのだな」と理解してから買うことが求められます。

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